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TOP > 乳房再建
術後の診察と定期検診
乳がん手術で失った乳房を形成外科の手術で取り戻す・・・それが乳房再建です。
再建された乳房は、厳密には元の乳房とは異なりますが、乳房が返ってくることにより得られる身体や心のQOLの向上が期待できます。


乳房再建の基礎知識  自家組織による再建(筋皮弁法)
人工乳房による再建(インプラント法)  バランスのよい乳房を得るために  乳頭・乳輪の再建
再建術後のケアと工夫

乳房再建の基礎知識
乳房再建とQOL

温泉乳がん手術の乳房切除による「喪失感」や「日常生活の不都合」は、人によっては、乳房を再建することで、解消されることもあります。
具体的なQOLの向上は、表に示すようなことですが、乳房喪失による肉体的、精神的な苦痛は、人それぞれで異なります。乳房切除後引っ込み思案になりがちだった人が、乳房再建により積極的になるなど、乳房再建には言葉では伝えきれない精神面での大きな効果があるようです。


乳房再建によるQOLの改善

●乳房切除による喪失感が解消される
●補正パッドが不要で、一般の下着が使える
●他人の視線が気にならなくなり、温泉に行ったり、子供と入浴ができるようになる
●パートナーと、自然に接することができる

乳房再建の種類

現在、行われている主な乳房再建は、図のように分類されます。



「お腹や背中などの身体の一部から、胸部に皮膚、脂肪、筋肉を移植する自家組織による方法」と、「人工物を胸部に挿入する方法」は、それぞれ表に示すような特徴があります。これらの方法が併用して行われる場合もあります。




乳房再建の時期

乳房再建には、がんの摘出と同時に行われる一期的再建(同時再建)と、手術後に時間をおいて行う二期的再建があります。それぞれの特徴を表に示します。



<一期的再建>
乳房再建は、原則として形成外科で行われますから、一期的再建を行うには、手術を行う病院・施設に形成外科がある(常勤、非常勤の形成外科医がいる)ことが、手術を受ける最低の条件になります。
また、乳がんの確定診断から手術までの短い期間で、再建手術について理解し、術式を決定する必要があります。この時期は、がんになったという現実を受け入れなければならない、精神的に非常に不安な時期に重なります。
乳房の同時再建を推奨し、外科と形成外科の協力体制が整っていて、乳房切除術から再建まで積極的に行っている施設でないと、同時再建手術を受けるのは難しいというのが現状です。



<二期的再建>
「再建してみたい」「再建したい」と検討を始めるのは、乳がんの手術が終わり、精神的に落ち着いてからでも遅くありません。形成外科の選択や術式などについて納得し、再建を決意するまで充分な時間を持つことができます。ただし、再建のために再度入院治療が必要になり、医療費負担も増えます。




乳房再建手術の健康保険適用

2006年4月より、乳房再建手術(一期的、二期的)に健康保険が適用されました。但し、人工乳房の素材など、一部保険適用外のものもありますので、詳しくは直接主治医や形成外科医に問い合わせてください。
乳頭・乳輪の再建も、原則として健康保険が適用されます(刺青の染料の購入代など、一部適用外のものもあります)。


乳房再建を決定するまでに



<形成外科医の選択>
乳房再建は、執刀する形成外科医の経験や技術に大きく影響される手術です。自分の満足のいく乳房を得るためには、自分のニーズに合う形成外科医を選ぶことが大切です。実際は、それぞれの形成外科医には得意とする術式があり、自分の希望する手術と、医師から示される手術の方法が異なる場合もあります。

<自分にとって再建とは何かを理解する>
乳房再建も外科手術ですから、副作用や合併症が全くないわけではありません。手術の方法によっては、出産が困難になるなどのリスクもあります。再建についての自分の希望や、再建をすることに対してどんな期待を持っているのかをはっきりとさせ、手術によって起こりうるリスクについても理解しましょう。そして、「自分にとって乳房再建とはどういうことか」ということをよく考えましょう。

<インフォームド・コンセント>
インフォームド・コンセントを充分におこなって、形成外科医と信頼できる関係を結ぶことが大切です。そして、充分に納得した上で乳房再建手術を受けましょう。それが、満足度の高い再建乳房を得るための近道となります。再建前後の写真なども見せてもらうとよいでしょう。
(ただし、形成外科医から見せてもらう写真は、医師が満足しているとてもきれいな症例が多いです)

<乳房再建体験者と会う>
もし、身近に乳房再建の体験者がいるのなら、実際に再建した胸を見せてもらったり、その体験を聞いたりすることも、乳房再建を理解する上で役に立ちます。

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自家組織による再建(筋皮弁法)
広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)

広背筋皮弁法背中の皮膚と脂肪、背筋を乳房切除術が行われた場所に血管を繋いだまま、腋の下に作った皮下トンネルをくぐらせて移植します。皮膚の一部をつけたまま切り取った筋肉と脂肪を皮弁といいます。

<どのような人に適しているか>
・人工乳房を使いたくない人
・出産の可能性を残したい人
・拡大手術により、胸筋を切除した人

<利点>
・移植の距離が短いため、血流が安定していて、再建した胸の壊死(えし)が起こりにくい
・自然なやわらかさの乳房ができる

<欠点>
・背中の筋肉は脂肪が少ないため、大きな乳房では移植組織が不足し、インプラント法を併用する場合もある(その欠点を補うため、拡大広背筋皮弁法という組織を大きく取る方法もあります)



腹直筋皮弁法(ふくちょくきんひべんほう)

おへその下のお腹の皮膚と脂肪、2本ある腹直筋の1本を乳房切除術が行われた場所に血管を繋いだまま、お腹の下に作った皮下トンネルをくぐらせて移植します。



<どのような人に適しているか>
・人工乳房を使いたくない人
・拡大手術により、胸筋を切除した人
・大きな胸を作るためには、下腹部の方が脂肪組織が多いため、広背筋より腹直筋の方が適している

<利点>
・脂肪組織が多いため、再建された胸はやわらかく、再建手術の中ではもっとも自然
・大きな胸を作ることができる
・お腹の脂肪がなくなる
・リンパ節郭清を行った腋の部分にも組織を移植するため腋のえぐれが補正され、腕の挙上などの回復が早い

<欠点>
・広背筋に比較すると、血流が不安定で壊死が起こりやすい
・お腹に大きな傷が残る
・出産の可能性のある人や出産を希望する人には適用できない
・お腹に盲腸や帝王切開などの傷跡がある場合は、壊死(えし)が起こりやすい
・腹筋力が低下する場合がある

これらの欠点の一部を補う手技として、遊離皮弁法という方法もあります。


留意点と合併症

筋皮弁法では、移植した筋肉や脂肪への安定した血流の確保が重要です。次のようなことは手術や、手術後の状態に影響しますので、気をつけなければなりません。

<肥満>
肥満すると移植した組織に脂肪が多くなります。脂肪は、筋肉よりも血管が少ないため血行が悪く、再建した乳房が壊死することもあるなどの影響が出てきます。

<喫煙>
喫煙は、血管を萎縮させますので、血流が悪くなり、再建後の組織が壊死してしまうリスクが高くなります。再建した乳房が定着するまでの喫煙は、厳禁です。

また、確立はかなり低い(1〜5%程度)ですが、筋皮弁法には以下の合併症があります。

<術後血腫>
手術直後に、皮膚の下に血液がたまることがあります。これを血腫といいます。血腫は、手術で取り除きます。

<筋皮弁部分壊死>
血流が悪く、手術直後に移植した組織の一部が壊死することがあります。壊死した部分を切除し、壊死部分が多くて再建した乳房の変形が著しい場合は、人工乳房で大きさを補います。

<筋皮弁の脂肪硬化>
脂肪に血液が供給されない場合に、硬いしこり状の塊ができることがあります。気にならないようであれば、そのまま放置しますが、大きい場合は切除手術を行います。

<腹部ヘルニア>
腹筋を取ってしまうため、弱った部分から腹部の内臓が出てくる症状です。立ったときに傷跡の部分にしこりができ、横になるとなくなります。腹痛、消化障害を起こすこともあります。手術で治します。

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人工乳房による再建(インプラント法)
人工乳房の種類

現在乳房再建に用いられる主な人工乳房には、以下の種類があります。



現在、一番用いられている素材は、コヒーシブ・シリコンです。
人工臓器などの医療製品に使用されるシリコン製の極薄いバッグに、米国FDA(日本の厚生労働省にあたるアメリカの食品医薬品局:Food and Drug Administration)認可の安全性の高いシリコンが寒天状で入っていて、破損しても中身が体内に漏れ出すことはありません。感触は、柔らかいグミのような感じで、自然です。


人工乳房による再建の種類

人工乳房の再建には、1回の手術で人工乳房を胸に挿入する単純人工乳房挿入法と、1度目の手術で組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を挿入して予め皮膚を伸ばした後、2度目の手術で人工乳房を挿入する組織拡張法(ティッシュ・エキスパンダー法)があります。どちらの方法を用いるかは、乳房切除後の皮膚の状態により、形成外科医が判断します。


単純人工乳房挿入法

単純人工乳房挿入法皮膚の拡張を行わず、大胸筋の下に直接人工乳房を挿入する方法です。

<どのような人に適しているか>
・乳房切除術で皮膚と大胸筋が残されている人や皮膚、乳頭・乳輪が残された皮下乳腺切除法など
・温存手術を受けた人

<利点>
・手術が1回ですみ、時間も短い(約40分程度)
・外来の日帰り手術が可能
・乳房切除術を行ったときの傷からバッグを挿入するため、新たな傷は増えない

<欠点>
・乳がん手術からの経過時間が長いと皮膚が萎縮し、自然な形の胸が作りにくい
・大胸筋が温存されていないと適用できない
・体内に異物を挿入するため、アレルギー反応や感染症が起こる場合がある


組織拡張法(ティッシュ・エキスパンダー法)

ティッシュ・エキスパンダー法大胸筋の下に組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を挿入し、生理食塩水を注入して皮膚を徐々に伸ばします。 健側の乳房とほぼ同じか、やや大きくなった時点で、ティッシュ・エキスパンダーを抜き取り、人工乳房を挿入します。
ティッシュ・エキスパンダーは、乳房切除の手術時に外科医が挿入することもあります。

<どのような人に適しているか>
・大胸筋が温存されている人
・皮膚にゆとりがなく、そのままでは人工乳房が挿入できない人
・筋皮弁法による乳房再建を望まない人

<利点>
・手術時間が短く(約40分)、日帰り手術も可能
・乳房切除術を行ったときの傷からバッグを挿入するため、新たな傷は増えない
・単純人工乳房挿入法に比較して、より自然な形の乳房を再建できる

<欠点>
・大胸筋が温存されていないと適用できない
・体内に異物を挿入するため、アレルギー反応や感染症が起こる場合がある。


留意点と合併症

人工乳房の合併症としては、以下がありますが、信頼できる形成外科の専門医の手術では、被膜拘縮(ひまくこうしゅく)以外は、ほとんど起きることはありません。

<被膜拘縮>
人工乳房は、身体にとっては異物ですので、排除しようとして、周りに繊維状の被膜を作ります。この被膜は、球形になろうと収縮し、再建した胸が硬くなります。再建した乳房をよくマッサージすることで、予防することができます。拘縮が酷く、再建した胸がボール状に硬くなり、酷い痛みを伴う場合は、人工乳房摘出の手術を行う場合もあります。

<痛み・発熱>
ティッシュ・エキスパンダー挿入直後、人によって激しい痛みや発熱を伴う場合があります。
発熱は、感染症によることもありますので、早急に医師の診断を仰ぎましょう。感染症の場合は、挿入した人工乳房やエキスパンダーを症状が治まるまで一時的に取り除く手術を行います。
痛みは一時的なものですが、あまりに酷いときは、医師から鎮痛剤を処方してもらいましょう。

<バッグの破損>
再建した胸を強く圧迫したときに、人工乳房のバッグが破損することがあります。コヒ−シブ・シリコンの場合は、内容物のシリコンが外に漏れ出すことはありませんが、形成外科医の定期的な診断をうけましょう。

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バランスのよい乳房を得るために
形状修正の再手術

乳房再建の1回の手術で、左右のバランスのよい満足できる乳房の形が得られるとは限りません。
形成外科は、本来の乳房にできるだけ近い形にすることを目的としていますから、患者が満足するまで何度でも乳房の形を修正する手術を受けることができます。
ただし、手術は原則として全身麻酔で行われ、身体への負担もありますので、ある程度のバランスが得られたところで、それ以上の修正手術を望まないケースが多いでしょう。
ここでは、一般的に行われている形状修正を紹介します。


筋皮弁法の再手術

筋皮弁法の再手術筋皮弁法では、移植した組織が収縮したり、一部壊死したりすることを考慮して、最初の手術ではやや大きめの乳房を再建することがあります。
再建手術より半年ほど経過した後、希望があれば、健側の大きさと形状に合わせるための再手術を行います。
再手術は、乳頭・乳輪の再建手術と同時に行われる場合もあります。


インプラント法の再手術

単純人工乳房挿入法健側の乳房は、加齢に伴って下がってきますが、人工乳房ではやや垂れた胸を形作ることは困難です。
そこで、左右のバランスを良くするため、健側の胸を乳房内部で吊り上げる手術を行います。吊り上げるときは、原則として乳輪に沿ってメスを入れますので、傷はほとんど目立ちません。
また、健側の胸が大きすぎる場合は、健側の乳房を縮小する手術をして、バランスを整える場合もあります。
この手術は、エキスパンダー挿入時やコヒーシブの挿入時に同時に行われる場合もあります。

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乳頭・乳輪の再建
再建手術より半年〜1年程度経過して再建した胸が安定したころ、希望があれば乳頭・乳輪を再建します。
乳頭・乳輪の再建には、以下の方法があります。

健側の乳頭を移植 ・健側の乳頭・乳輪を切り取り、再建側に移植する方法

真皮弁法・再建乳房の皮弁を起こして乳頭を作り、乳輪は色見が類似している大腿部付け根の皮膚を移植する方法

・再建乳房の皮弁を起こして乳頭を作り、乳輪と乳頭を刺青で着色する方法

皮弁立ち上げによる乳頭再建を除き、外来の日帰り手術が可能ですが、胸のふくらみが戻ってきたことに満足して、乳頭・乳輪の再建までは希望しない人も多いです。
皮弁を立ち上げて作った乳頭は、時間の経過に伴ってつぶれて平坦になることもあります。そのため、再建時はやや大きめに乳頭を作ります。つぶれないようにするために、うつぶせに寝たり、胸を押しつぶすようなことをするのはやめましょう。

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術後のケアと工夫
乳房再建の術後のケア

<傷跡のケア>
形成外科による乳房再建手術の傷跡は、非常にきれいですが、傷跡が盛り上がってケロイド状になるのを防ぐために、術後しばらくの間、傷跡にテープを貼ります(サージカルテープ)。サージカルテープの種類や貼り方、ケアの期間は、形成外科医により異なりますので、形成外科の主治医に確認してください。

<腹直筋皮弁法での筋力回復までのケア>
腹直筋皮弁法では、2本ある腹直筋のうちの1本を再建に利用しますので、術後は腹筋が低下します。時間の経過につれて、まわりの組織が筋力をつけていき、腹筋の代わりができるようになると、スポーツも普通にできるようになりますが、術後2〜3ヶ月は激しいスポーツは禁止され、腹筋力を補助するためにガードルの常時着用が義務付けられます。
締め付けの強いガードルの常時着用がつらい場合は、ソフトガードルを着用するとよいでしょう。

<筋皮弁の血流の確認>
退院後でも、乳房への血流が悪くなり、再建した乳房が壊死する場合があります。再建した乳房の皮膚の色に注意を払い、肌の色が違ってきたと思ったら、早急に形成外科医の診断を受けましょう。

<乳頭・乳輪の刺青の修正>
乳頭・乳輪の刺青は、時間の経過に伴って色がはげてくる事があります。余った刺青の染料は、形成外科医から渡されるか、医療施設に保管されていますので、着色をやり直すことが可能です。染料を渡された場合は、大切に保管しましょう。

<感覚が無いことによる注意>
再建した胸は、神経が戻っていませんので、触れてもほとんど感覚がありません。熱さや痛みも感じません。
痛みがわかりませんから、傷ついたことに気づくのが遅くなることもあります。やけどや切り傷を負わないように、充分に気をつけましょう。なお、感覚は、数年経てば戻ってくる場合もあります。


体験者の工夫・声

・再建した胸と健側の胸のバランスが悪く、普通のブラがうまくつけられませんでした。いろいろな形のものや種類を試した結果、ホールド力があり、素材が伸縮するスポーツブラを愛用しています。

筋皮弁法の再手術・シリコン製プロテーゼで本物そっくりの乳頭・乳輪を作りました。温泉などに入るときだけ接着剤(つけまつげに用いる安全なもの)で胸に付け、乳頭・乳輪の無い胸をカバーしています。

・筋皮弁法での再建手術後は、暫くの間ブラを着けてはいけないと医師に言われました。ブラをしないで外出するのはいやでしたから、外出時は、ブラの代わりにソフトな素材の胸帯を利用していました。

・手術前に、形成外科の先生から傷跡の目立たないとてもきれいな写真を見せて頂きました。実際の手術後は、傷跡が目立ち、事前に見た写真ほどではありません。手術前に過大に期待しないようにしましょう。

・腹直筋皮弁で同時再建をしました。再建直後は、動くたびにぞわぞわっとする感覚があったり、再建の胸がぎゅっと締め付けられるような違和感がありましたが、半年ほどでその違和感もなくなり、今は友人と温泉を楽しんでいます。

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