リンパ節郭清によって起こりうる障害を少なくするために、リンパ節郭清を最小にする試みが始まっています。
乳房からのリンパの流れを最初に受け止めるリンパ節(センチネルリンパ節)だけを摘出して、顕微鏡検査で、がん細胞があるかどうかを調べて、がん細胞がなければ、他のリンパ節への転移はないと考えて、リンパ節の郭清を省略する方法です。
センチネルリンパ節を見つける方法
センチネルリンパ節を見つける方法には、ガンマプローブ法と色素法の2つがあります。
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ガンマプローブ法 |
手術前日〜5時間前に放射性薬剤(アイソトープ)を乳房の腫瘍周辺に注射しておきます。注射された放射性薬剤は、リンパによって運ばれ、センチネルリンパ節に集まります。手術中に、ガンマ検出器を使って、放射能をもつリンパ節を探します。 |
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色素法 |
手術前に色素を乳房の腫瘍周辺に注射します。注射された色素は、リンパによって運ばれ、センチネルリンパ節が青く染まります。 |
それぞれに一長一短があり、1つの方法だけでなく、2つの方法を併用しているところもあります。
センチネルリンパ節は、手術中に見つけ、摘出して、その場で病理診断(顕微鏡で調べる)を行います。がん細胞がない場合は、リンパ節は取り除きません。
もしも、センチネルリンパ節にがん細胞が見つかった場合は、他のリンパ節にも転移している可能性があるので、腋の下のリンパ節郭清を行い、転移しているリンパ節がいくつあるかを調べます。
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==留意点==
センチネルリンパ節生検は、まだ、日本では乳がん治療の標準治療ではありません。
一般的に、視触診や超音波検査などで、明らかにリンパ節転移があるとわかっている場合はできません。
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==長所==
リンパ節転移がなければ、腋窩リンパ節郭清を省略することができ、郭清で起こりうる上腕のむくみや痛みなどの後遺症がなくてすみます。
==短所==
すべての「見張りリンパ節」を取りきれるわけではありません。また、センチネルリンパ節に転移がなく、他のリンパ節に転移している可能性もあります。
実施している施設が、設備の整った病院や大学病院に限られていることも、短所のひとつです。
リンパ節を切除してもしなくても、10年生存率に差はない、というデータもあります。
術後のQOL(生活の質)と、自分のがんの病状をよく考えて、腋窩リンパ節を郭清するかどうかを決めましょう。
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